高原への道は



「なっ……バカか、お前、何言ってんのかわかってるのかよ!」
 深夜の宿。ベルカは叫び出したいのをどうにかこらえ、囁いた。


 こんな状況下だが、ベルカとて健全なそして健康な青少年だ。たまるものはたまるし、適宜抜いておかないと朝になってから情けないする。
 とはいえ、周囲の目が気にならないわけではない。
 夜中にそっとコトに至っていたら、手洗いに立ったリンナが、漏れ聞こえる荒い息と呻き声を盛大に誤解した。それだけといえばそれだけだ。
 そこでリンナが出した[提案]が突拍子もないだけだ。
 その、処理の行為の手伝いをさせて欲しいなどと。
「だいたい、お前にそんな風に……触らせんのも申し訳ないっつーか」
 兄上との、いわゆる抜きっこならば経験がある。
 人の手で達するのは、自分の手とはまた違った趣があって悪くない。
 だが。
 互いに楽しむならばともかく、ただ処理の行為を人にさせるなんていうのは問題外だ。
 それを伝えると、暫し考え込んだ後、リンナが口を開いた。
「つまり、殿下のその、処理を行いつつ、私も楽しめれば良いと……そういうことですね」
 あまりに真剣な様子に、つい頷いたベルカ。リンナは意を決したようにこう持ちかけた。
「では……大変図々しいお願いとは存じておりますが……[マリーベル]の格好をなさった殿下を、……足で、
させはていだけませんか」
「なっ……バカか、お前、何言ってんのかわかってるのかよ!」
 斜め上すぎる返答に、ベルカはつい立ち上がった。同時に寝台の前でひざまづいていたリンナが土下座の姿勢をとる。
「殿下、どうか!」
「ちょ、やめろよ。わかった、わかったから」
 こんな時でも普段と同じひたむきさに、遂にベルカがそれを承諾した。


 ベッドの端にクッションをたくさん積んで、そこに凭れ掛かった。
 深くスリットの入った、ふんわりと広がるドレス。やはり一人では着られず、リンナに手伝わせた。
 そしてその下には何も着ていない。投げ出された脚の付け根を隠す下着の一枚さえも、つけていない。
 倒錯的な状況に、当初乗り気でなかったベルカも、自身がどことなく興奮を覚えていることに気付いた。
 憎からず思っている相手ではある。
 提案がなされた時には驚いたが、他の身近な男性であった兄の事を思うと、大人の男というのはそういうものなのかもしれない。と、そう受け入れられた。

 水で湿した絹の靴下は足にぴったりと張り付き、表面はほんのりぬめりを帯びたような感触になる。
 リンナの体温を宿したそれは、まるでしろい色をした水棲動物のようだった。 
 ドレスのスリットから滑り込んだ足が、太股を撫で上げる。
 ほのかなあたたかさと、濡れた感触。
 気持ち良いような悪いような、微妙な感覚。
 焦らすようにそれを何度も繰り返される。
「殿下、どんな感じですか?」
「んー、まだ……よくわからねー」
 ふむ、と頷かれる。
「殿下はまだあまり経験を積まれていらっしゃいませんものね。これでは婉曲的すぎる、といったところでしょうか」
 そうして少しいざり、数センチベルカに近づく。
 先ほどは触れなかった部分に、足先が届く。
「ッ……」
 まるで別の生き物のようなそれに直接刺激され、ベルカのものがたちまちに硬度を増した。明らかに先ほどまでとは違うベルカの反応に、探るような目をしていたリンナが表情を緩める。
「流石、お若くていらっしゃいますね」
 もう少し距離を詰め、もう片方の足もドレスの裾から中へと侵入させた。直接の刺激を与えながらも、先ほどと同じように太股をなぞり上げる。
「はっ……ぁ、なんかそれ、ぞわぞわする……」
 身を捩り、右手で自分の左上腕をぎゅうと掴んだ。
 最初は若干の照れと戸惑いが浮かんでいた頬が、はっきり上気の色を見せている。
「これでは如何でしょうか?」
 太股から足先を離し、今度は足の指でカリ首を挟み込むと、ゆっくりとその括れている部分の形を確かめるように動かした。
「ふ、ぁ……」
 時折そのルートを外れ、先端を形に添うようにして撫でる。その度ベルカの腰が跳ねた。
「それ、なんつーか、……出そーになる感じじゃねーんだけど、ッ……ヘンな……ひぁッ……」
 生理的な涙の薄膜が、ベルカの瞳を一層に煌めかせる。
 屹立したものは痛いほどに張り詰め、僅かな動きにもびくびくと身を震わせるに至った。
「ふ、ぅ、ぁ、ぁ、リンナ、リンナ……!」
 伸べられた手に応えるようにぐっと距離を詰め、ベルカの右腕をとる。と同時に両の足の指の付け根で挟みこみ、足首の律動的な動きで追い立てた。
 右手の指をベルカの左手指に絡めると、ぎゅうと力を込められる。程無く、ベルカはスカートの下で果てた。
 未だ整わぬ呼吸を浅く繰り返すベルカを抱きしめ、囁いた。
「……このような戯れ事に、お付き合い戴けましたことを感謝します」

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あとがき的なアレ
「夜も更け寝床にて、リンナが手を合わせて頼み込む→ベルカしぶしぶ(ただし5%くらい楽しみな感じで)承諾→ベルカの表情の変化を最初から最後までたっぷり楽しむリンナ」
ということでフォロワーさんのPOSTを具現化させてみたのですが…
全面的にただのトト・ヘッツェン(しかもあまり実用的でない)でございました…すみません…