※肉体的・精神的ともに凌辱描写があります。苦手な方はどうぞ回れ右なさってください

手負いの鷹、雛鳥に襲わる



「あーあ、つまんねー。ずいぶん弱くなりやがったな、あんた」
 ぱしゃ、と石段に溜まった水を飛沫せ、赤が歩みを進めた。
 対し黒は、大したものではないか、と思った。
 あの日、立太子式の日。黒自身が落とした鉄柵を身に受け、生きながらえただけでも人並みの体力ではない。それから四……いや三ヶ月半、といったところか。
 先生に聞くところによると、鉄柵はベルカ王子の上に落ち、このオルハルディは刺し貫かれるところだったベルカをかばったが為に傷を負ったのだという事だった。
 あの日水路で鉄柵に貫かれ、たおれたオルハルディを目にした時には、間の抜けた奴だと思ったのだが、どうやらそうではなかったらしい。
 そして今。歩くことさえままならぬ身体で、もう一人をかばい赤の刃を避けた。
 先生にはまだまだだと言われ注意される点も多々あるが、赤は別段、弱いというわけではない。気配も十分に消せていた。今は殺気をだだ漏れにしているが。
 その赤の刃を避けることを可能としたのは、おそらくはこの男の身に付いている能力だ。天性のものか、努力で磨き上げたのか。おそらくは、両方。
 その男が今、ただいちどの攻撃をかわして倒れ、そして未だ座り込んだまま浅い呼吸を繰り返している。失望する気持ちもわからないではないが、病み上がりの、まだ完治してすらいない怪我人にそれ以上を求めるのも酷と言うものだろう。もうひとり、オルハルディにかばわれた男の方は、さしたる衝撃でもないだろうにただ呻いている。
 戯れに殺されるようなことがなければいいが、等と気を回す。自分も別に『関係のない者は傷つけない』なんて矜持を持っている訳ではないが、意味なく人を殺す事にはやはり意味を見いだせない。しかし、戦いそのものや人を傷つけ殺すということ自体に興奮する性癖を持つ赤ならば、やりかねない。
 そもそも、今回の任務は『できる限り傷つけずオルハルディを連れ戻す』である。抵抗がなければ傷つける必要もない。時間もかけずにすむ。好都合ではないか。
 しかし、赤が考えていることは違ったらしい。
「……おまえは、キリコ卿の……」
 どうやら相手の記憶に残っていたことが嬉しいらしい。赤が唇を歪めた。
「なあ、覚えてるだろ? あの日のこと。馬車の上で……あんた、確かあの時も杖を持ってたよな」
 今のように歩行の補助具として使用するためのものではなく、純然たる装飾品としての杖。それを武器として赤の刃とあわせ、そして刃による傷を負わなかった。
 その日の赤の楽しそうな様子は、黒の記憶にもまだはっきりと残っていた。
「……思い出したら興奮してきちまったぜ。おい黒、こいつ縛っちまうからそっちおさえてろよ」
 こいつ、というのは先ほどオルハルディがかばったもう一人の方だろう。大聖堂の僧か、城で兵として働いていた者か。僧ならば仕方ないが、後者であれば一応は訓練も受けていただろうに、だらしがない。城で働く軽装歩兵はだいたいが身分のある者の子弟だった筈だが、ただのカッコ付けばかりなのだろうか。赤が何度か爪先を入れ、抵抗の気勢を削いで手際よく縛り上げる。こういう時の赤は本当に楽しそうに見える。
 オルハルディの両腕を後ろに回し、軽く拘束した。身じろいでそれを抜け出そうともがく男に声をかける。
「オルハルディさん、今回は殺したり傷付けるのが目的じゃない。じっとしていろよ」
 腕をねじりあげるのは簡単だったが、そうしようとは思わなかった。たとえ抜け出されたとしても、こんな身体では逃げられやしないだろう。
 強さがすべてだ。そう信じていた。信じている。先生は奴隷として扱われていた自分たちに、生きる為の術を教えてくれた。感謝してもしきれない。オルハルディには先生が一目置いていた。先生が敬意を払う相手ならば、自身もそうするべきだろう。そこに疑問の余地はなかった。
 大人しくなったオルハルディだったが、その目に諦めの色は見えなかった。これだけ絶体絶命なのに、それでも活路を見出そうとするかのように、注意深く周囲に視線を走らせている。視線が泳いでいるのではない。
 その視線が、縛る作業を終えた赤のものとぶつかる。絡む。
「弱くなったくせに、目だけは変わらねえのな」
 赤の唇が弧を描く。
 オルハルディが警戒の色を浮かべる。
「あんた、ベルカにブチ込まれてあんあん啼いてただろ」
「それ、は……!」
 赤の言葉に、目に見えてオルハルディが動揺した。何を言い出すのかと思ったが、この様子を見ると事実なのだろうか。
「あの晩の見張りは俺だったからな」
 唇を歪める。目に昏い光が宿る。
「あー……、なあ黒、ちょっとそのまま抑えててくれよ」
「なに、を」
 疑問を含んだ言葉には応えず、赤が振るった短刀がオルハルディの上衣を切り裂く。その内、肌に巻かれている真っ白い包帯が目に痛々しい。
「おい……」
 これからオルハルディを連れ、先生そしてキリコ卿のところに戻らねばならないと言うのに、なんということをするのか。抗議の声をあげたが、赤は意に介さなかった。瞳孔が開いている。こうなったらもう、自分では手の施しようがない。先生にしか止められない。
「なあ、男とヤんのってイイのか? あんたとまた戦うの、楽しみにしてたのにマジ期待はずれでさ……」
 こっちはまだ興奮しっぱなしなんだぜ、責任とって俺にもヤらせろよ。と、オルハルディの脚に股間を擦り付ける。下品というか、実に直截的な奴だ。
 赤の指が包帯の上を辿る。オルハルディが僅かに呻く。
 まったく、仕方のない奴だ。息をついてオルハルディを立ち上がらせた。戸惑うオルハルディの下衣を留めている腰紐を解く。ゆったりとした作りのそれは、唯一の固定具を失い呆気なく地に落ちた。次いで下着をも取り去る。屈辱を味わわせる事になろうが、まあ手足がなくなったりするよりはましだ。そう割り切ってもらおう。

「なあ、わざわざあんたを抱くって事は、ベルカには男色の趣味でもあんのか? あんたじゃ女の代わりにはならねえだろ」
「違う!」
 強い語調。おそらくはまた先ほどのような目をしているのだろう。からかい半分の黒の言葉を、ベルカへの侮辱と取ったのだと想像がついた。
「私が……望んで、無理矢理行為に至っただけだ」
 逆にオルハルディがベルカのことを犯したというならばともかく、その言葉には無理があるように思えた。だが。
「無駄だ赤、そうしてベルカ王子のことをいくら訊いても口を割りはしないだろう」
 思い出されるのは、馬車の上での赤との交戦の後のことだ。馬車から落ち軽い打撲と擦過傷を負ったオルハルディを捕らえて簡単な手当を行い、尋問には黒がついた。
 解放の直前の様子を考えると、情を通じているというのは確かなように思えた。手枷を用いて寝台に繋がれたオルハルディに、のし掛かるような体勢でいたベルカ。暫し視線を絡ませていた二人は、僅かながら頬を染めていたように思える。とはいえ、当時はそういう視点で観察していた訳ではない。記憶は曖昧だった。
 よく覚えているのはむしろその後だ。口を割りはしなかったが、その後キリコのかけた鎌にはベルカ共々あっさりと引っかかっていた。けして弁が立つ方でない自分が何故尋問につかされたのか不思議だったが、あの瞬間納得したものだ。緊張の糸を緩ませ、一瞬の隙を突く。もし今自分達で何かを聞き出すならば、正攻法でなく身体に……ということになるだろう。ただ、この男が拷問に屈するとは思えない。拷問にでもかけるのかと問うた時の目に、脅えの色は無かった。
 別の方法であればどうだろうか。
 以前先生がちらりと言っていた言葉。
『肉体的苦痛だけが拷問ではない。また、ただ痛めつけるだけが拷問ではない』
 結局その時は『おまえたちには、まだ早い』と正式に教わることはなかったのだが、ある本を読んだ事により、その内容のひとつを、朧気ながら知るところとなった。

 オルハルディの腕を拘束したまま身体をずらし、赤の為に身一つぶんの場所を空ける。
 まるで獣のように舌なめずりをしながら、石段の上で赤が下衣をくつろげる。
 確かにオルハルディを立ち上がらせたのは黒だが、別に立ったままでなくても良いのではないかと思うのだが。赤はただ双丘を両の手で押し広げ、露出した自身のものをぐいぐいと押しつけるのみだった。斜め後ろからでも、オルハルディが歯を食いしばり、強引に押し入ろうとされる痛みに堪えているのがわかる。
「ん……入んねー……クソッ」
 もう少し考えたらどうだろうか。いくらオルハルディの側に行為の経験があったとしても、外部からものを受け容れる構造をした場所ではない。何の準備もせずにただ突っ込もうとしても、自分自身も痛いだけだ。
 尤も、ただ苦悶の声を聞きたいのであれば、そちらの方が良いのかもしれないが。
 何度か腰を使いねじ込むようにしたり、角度を変えたりしていたが、どうやら諦めたらしい。
「チッ……なあ黒、なんとかしろよ」
 自分で始めておいて、ひとに道を拓かせようというのか。ツッコミを入れたい気持ちもあったが、嘆息してオルハルディの腕を抱え直した。
 背後からオルハルディの首筋に舌を這わせる。
「──ッ……!」
 声を、息を殺そうとしている。オルハルディの身体は雨に打たれ冷えきっている。舌先の熱さはさぞ沁み入ることだろう。
「オルハルディさん……」
 首から唇を離し、敢えて吐息が耳にかかるようにして囁きかける。堪えているのだろうが、ほぼ身体を密着させた状態では、相手の身体に力が入れば、それが手に取るようにわかる。
「ベルカ王子は、あなたにどうやって触れた?」
 露出させた下肢を膝からゆっくりと撫で上げる。
「優しく? それとも夢中になって?」
 緩慢な動きを繰り返すうち、次第にオルハルディの脚から力が抜けていく。声こそ殺しているものの、呼吸は次第に乱れ、寒さからではない震えが伝わってくる。
「あなたが無理矢理思いを遂げたなんて嘘だろう? ベルカ王子はお優しいと聞いている。あなたもベルカ王子に助けられた……と言っていた。そうだったな?」
 オルハルディは黙ったままだ。
 暫し逡巡し、撫で上げながら囁いた。
「リンナ……」
 出来うる限り、甘い声音で。
 声が似ているとは思えなかったが、この男の精神に揺さぶりをかけるのには事足りたようだった。声にならない声を上げ、オルハルディの身が傾ぐ。がくりとついた膝に、石畳に溜まった雨水が飛沫く。拘束した腕を過剰に捻り上げてしまいそうになり、慌てて自身も腰を屈める。
「黒おまえどこでそんなの覚えてきたんだよ。エロ本か何かか?」
「訊くな」
 赤の茶々をひとことで両断し、黒は行為を続けた。きつく目を閉じて頭を振るオルハルディの煉瓦色の髪から、雨の雫が滴る。額にはりついたそれを指で梳く。言葉を耳から流し込む。
「忘れちまった訳じゃねえだろ? 思い出せよ……」
 ベルカとの行為を。
 先ほどまで下肢を撫でていた手で、今まで弄っていなかった前に触れる。
「ッ……」
 熱を帯び始めていたそこは、黒の手に触れられ形を成した。主人と従者という立場での精神的な絆だけでなく、赤の言うような肉体的な情交があったというのも事実のようだ。
「オルハルディさん……よほど、ベルカ王子が好きだったんだな」
「──わたし、は、ベルカ殿下に、忠誠を……今っ、も……ッ」
 きゅ、と手に力を入れ握り込むと、息を呑んだ。
 ──それは、本当に『忠誠』なのか?
 疑念を抱きつつ不自然な体勢はそのままに、追い立てるように手を上下させて扱く。精神力ではどうにもならぬ先走りが溢れそぼる。雨と混じったそれを後孔に塗り付ける。気持ち悪さかそれともほかの感覚か、触れるたびに僅かに身を震わせる。前と後ろを何度か往復する頃には、指先程度なら用意に飲み込めるようになっていた。
「力、抜いてろよ。オルハルディさん。……それとも」
 リンナ。
 あてがった自身のものを押しつけながらその名を唇に乗せる。
「ふ…っ、うぁっ……」
 抵抗はあったものの、想像よりは容易に先端が飲み込まれた。オルハルディの呼吸に合わせてまずは根本まで埋める。初めて包まれる他者の内部は想像以上に熱く、そして心地よかった。男は勿論女を抱いたこともなかったが、俗世間の男が性行為に拘る気持ちがわかるような気がした。
「オルハルディさん……どこがイイ?」
 探るように動かす。反応を感じられた部分を重点的に圧したり擦ったりしてみる。ひくり、ひくりと身は跳ねるのだが、その度に首を振り、歯を食いしばっているのだろう、声を飲み込み続ける。
「強情だな……でも、こうしたらあなたでも堪えられない」
 リンナ。再度その名を呼ぶ。
「ッは……ぁ、う…ッ」
 黒を飲み込んでいる部分がきゅう、と締まる。不意な締め付けに吐き出しそうになるのをこらえ、ぶるっと身体を震わせた。初めての行為をもう少し味わっていたかった。
 その名を唇に乗せる度、過剰なまでに反応することがたまらず、何度も何度も名を呼んだ。 短く上がる、苦悶とも嬌声ともつかぬ声に、絡みつくように締め付けるそこで擦られる気持ち良さに、腰を動かすスピードが自然と速くなる。
 やがて、その名を呼びながら中で果てた。

「ったく、長っげーんだよ!」
 つい夢中になってしまったがそれでも律儀に待っていた赤に苦笑して見せ、再度位置を交代する。
 力を失ったものを抜くと自らが吐き出したばかりの液体がどろりと溢れ出し、オルハルディの内股を伝う。それがやけに扇情的に見えた。男であるというのに、だ。
 苦しそうな呼吸を繰り返すオルハルディに構わず、赤がまた強引に押し入った。
「ぁ……くっ……」
 そこだと動きにくいと言われ、また場所を変える。先程の行為で体力が尽きかけ、ほぼ体勢が崩れた状態のオルハルディを支えるような位置に身を滑り込ませた。
「んっ……クソ、意外と動かしづれえもんだな」
 呼吸を合わせれば、腕を拘束したままだった自分よりもはるかに動かしやすいだろうに、赤はオルハルディの腰を掴み、ただ強引なだけの抽挿を行っていた。
 雨音にぬちゅ、ぐちゅ、という粘着質な音が混じる。
 行為に耽っていたときには見えなかった表情を観察する。奥歯を噛みしめ、眉根を寄せて堪える様子を。浅い息を繰り返す様子を。
 不意に響いた、パーンという音に視線を向けると、赤が平手でオルハルディの尻を打っていた。獲物にナイフを突き立てるときのような様相でオルハルディの中を抉りながら、何度も尻を張る。
 オルハルディに視線を戻すと、口の中からちらりと赤い肉が覗き、そしてそこに歯を──。
「っぐ……ぅ」
 とっさにその顎を掴み、白い歯列を舌に立てることを阻止する。きつく閉じられていた目が薄く開かれる。そこには先ほどのような強い意志を伴った視線は無い。が、それが一瞬驚愕の色と共に見開かれ、そして希みの光がゆっくりと失われた。
 ふと、ひとつの仮定が浮かんだ。
 そういえば、ベルカも黒い髪をしていた。
 掴んだままの顎、唇に唇を重ねると、オルハルディは目を見開き、頭を振ってその拘束をふりほどこうと激しい抵抗を見せた。
「うっ……く、ふ……や、やめ、おまえ……はっ……違っ……!」
 口を閉じられぬ状態では後ろから突き込まれる度に喉の奥から漏れる声も抑えられぬと見え、言葉に掠れた吐息が混じる。
 唇はどうやら敏感な感覚器でもあるらしく、そこを合わせるこの行為が妙に心地よく、ゆっくりとオルハルディの口腔内を侵していく。頭を振ろうとするのを、顎を掴んだ手に力を入れて牽制する。
「っは……すっげえ締まるぜ……ッ。ほら、もっと自分でも腰振ってみろよ」
「ん……ぅっ……ふ……」
 強引な抽挿にただ苦しそうだった呻き声に、次第に色が乗ってくるような気がした。これだけ強引な行為でも、どうやら味わっているのは痛みだけではないらしい。時折身を捻りかけては呻くのは、傷が痛むせいだろうか。
 先ほどの行為のように、次第にくちづけの結合を深くしていく。歯列の隙間から舌を差し入れて口蓋を刺激する。奥へと逃げ込む、オルハルディの舌を突く。
「っ…ぅ…や、め……くっ、ぅ……」
 きつく閉じられた目の端から雫が伝い落ちたのは、未だ降り止まぬ雨か、それとも。

「ッ……は、出すぜ……あんたにぶっかけてやるよ」
 引き抜かれたものをまともに目にしてしまう。夥しい量の白濁した液体が先端から放出され、雨と汗で濡れたオルハルディの尻に背に、そして石畳に散る。恍惚とした表情。
 その時、不意に声が降ってきた。
「まったく、やけに時間がかかると思ったら……黒までついていながら何をしているんだ」
 呆れた声に振り向くと、先生がそこに立っていた。
 気配に全く気付かなかった。
「怪我人にあまり無茶をさせるな。死んだらどうする」
 そうだった。オルハルディは重要な取引材料なのだ。
「すみません、先生……」
 赤も先ほどまでの様子はすっかりなりを潜め、しゅんとした様子である。
 ふう、とひとつ息をつき、先生がオルハルディを担ぎ上げた。僅かに呻き声を漏らす。
 大柄のオルハルディを担ぎ上げていてもふらつく様子を見せないあたり、流石は先生だ。石段をあがる先生の後を追い、修道院の扉を開けた。先ほど縛り上げた僧が何人か転がっている。先生はひとりの縄を切ると湯と新しい衣服を用意させ、雨と泥と精液で酷い様子になっていたオルハルディの身体を清め、ソファに座らせると湯を張ったたらいに足を差し入れさせた。こうしておけば、雨に打たれ冷えきった身体に体温が戻るのだそうだ。
「まさか貴公にこのような真似をするとは……うちのヒナ鳥どもがご迷惑をおかけした。傷に響くでしょうが、容赦いただきたい」
 頭布をとって礼を尽くす。その姿は堂々たるもので、貴族のそれと比しても遜色が無いように見える。

 じり、と胸の中でくすぶるものがある。
 先生は、オルハルディに一体なにを見出しているのだろうか。
 忠誠心とは言うが、この男は単にベルカに強い恋慕の情を持っているだけではないのだろうか。髪の色が同じというだけで、『リンナ』と名を呼ぶだけで、黒をベルカと重ねてしまうほどに。
 そこまで礼を尽くすだけの何かが、果たしてあるというのだろうか。
 ただの疑問であるはずのそれが、やけに重苦しいものに思えた。

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あとがき的なアレ
SCCにて無料配布しました「手負いの鷹、雛鳥に襲わる」です。
もともと紙での発行を想定して書いたものなので、画面だとさぞ読みづらかろうとおもいます…すみません
ゼロサム2011年6月号、黒の「オルハルディさん」呼びに萌え滾った挙句の発行と相成りました。
この話の設定を前提に、私の中で今黒リンが熱いです。

色々アレなのでサイトへのうpはしないつもりだったのですが、どうしてもこの話が無いと
その他の話の意味がわからなくなりそうなので、うpに踏み切りました。