20 110721



「オルハルディさん、見て……」
 ルツの声に、リンナは朦朧とする意識をそちらに傾けた。
 雨の中の陵辱で酷く体力を削られてしまった。
 処置は受けたものの、ただでさえ体力が落ちていたところに長時間雨に打たれ続けたせいで冷えきった身体はいま、まるでその分を取り戻そうとするかのように熱が上がっている。
 そんな状態のリンナに、ルツは言ったのだ。
 あなたが好きだ、と。
 もちろんその思いを受け入れることはできない。きっとただの気の迷いだと、その言葉をルツは否定した。
 そして今、リンナの目の前で下衣をくつろげている。
「あなたの事を考えただけで……こんな」
 ふう、と熱の籠もった息を吐く。
 頬には朱がさし、ルツもまた、熱があるのではないかと思える様相である。
「オルハルディさん……ごめん」
 酷い事をした、と謝罪の言葉を口にする。
「俺……わかったんだ、本当は、あんな風に無理矢理じゃなくて……ベッドの上でちゃんとあなたを抱いて、気持ちよく……なってほしい」
 そういう風に思っていたら、もうたまらなくて。
 切なげに眉を寄せ、自らの屹立したものに触れる。
「今はこんな状態だから、まずは……あなたに身体を治してもらわないといけないけれど」
 冗談ではない。
 体調が良かったとしても、この少年を受け容れる心づもりなどまったくない。
 だが、ルツの中ではすでにそれは決定事項らしかった。
「オルハルディさんの中……すごく気持ちよかった……」
 きゅ、と握る。腰をくねらせながらゆっくりとその手を動かし始めた。
 
 ***

 ルツは熱い息を吐きながら、自らのものを擦り上げる。
 リンナに見られていることで興奮しているのか、既に先走りの液体で濡れそぼり、くちゅくちゅと淫猥な音を立てている。
 そんなルツの姿に、リンナは思わず視線を逸らした。
 他人の自慰行為など、見ていて気持ちの良いものではない。
「……っ……ふ……オルハルディさん、こっち、見てよ……」
 見ていられるわけがない。
 自分を思い浮かべて自慰に耽る相手を、どんな顔で見ていろと言うのだろう。
 一向にルツの方を向こうとしないリンナに焦れたのか、ルツが呼び方を変えた。
「……リンナ……」
 瞬間、リンナの身体がビクリと揺れる。
「リンナ……こっち向けよ……」
 わざわざ口調まで真似て、ルツはリンナを呼ぶ。
「やめろ! その名で、呼ぶな……!」
 陵辱した時だけでは飽き足らず、また、リンナの中の想いを蝕んでいこうというのか。
 リンナの制止の声など聞こえていないかのように、ルツは何度も名を呼びながら行為を続ける。
 部屋に響く水音と、荒い呼吸と、時折漏れる甘い喘ぎ、そして……「リンナ」と呼ぶ声。
 それらが、リンナの聴覚から脳髄へと入り込み侵していく。
 まるで、ベルカがリンナの名を呼び、自分を慰めているかのように。
 違う。ベルカではない。そんなことは分かりきっている。
 なのに、繰り返し呼ばれる名が、違うと叫ぶ理性を侵食していく。
 耐え切れなくなって、リンナは視線をルツの方へと向けた。
 それに気付いたルツが、手を止めぬままに嬉しそうに微笑む。
「っは……やっと、俺の方を向いてくれた……」
 リンナの視線を得られたことでますますルツの興奮に拍車をかけてしまったのか、徐々に行為が激しくなっていく。
 「見られてるって、さすがに、んっ……恥ずかしい、けど……オルハルディ、さんが、俺のこと……はぁっ、見てくれてるの、嬉しい……」
 そう言って見つめられるその視線から、逃げてしまいたかった。
 けれど、リンナが目を逸らせば、またルツはリンナの名を呼ぶだろう。
 そうされてしまったら、違うと分かっていても……重ねてしまう。
 自分の目でルツの姿を見続けることでしか、それから逃れる術はなかった。


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あとがき的なアレ
2011年07月21日、110721の日、ということで…
自慰ネタを色々なカップリングで妄想したりとかしてまして
SILENT EDENの千冬さんとTwitterにてこんなやりとりがあり、
そんなわけで前半は私、後半は千冬さんです!

15分ほどで書き散らしたものを、実際に繋げて書いていただいて(しかもちょう萌える)
本当にありがとうございました!!